「押井塾」が展開してきた企画を通すための企画書の練りこみ。
その成果が、この合宿を機に、
作品「BLOOD THE LAST VAMPIRE」の練りこみへと変貌していく―――。
基本的には、あの場にいたら、押井さんと北久保さんに圧倒されるっすよ。負けちゃう。
喋りで、その隙間に入るのが、難しいですよね。仮にテープ回してたら――
ふたりの声しかしてないな。
ふたりで 9 割話してて、残りの 1 割を俺や藤咲さんが、すこーし、時折、割って入るっていうところで。・・・割って入れないほどなんですよね。
だから、逆にまだ、そこが足りないんだろうなってあるんですよね。俺とかもそうなんだけど。
そうだね。
自分にまだ、自分が出した企画書に対しての、思いっていうか、自信っていうか、欠けてる部分があるから。
あと、知識の情報量だと思いますよね。
情報量に関しては、ぜんぜん足んないっすね。やっぱり。
喋り負けてしまう。
でも、自分たちが生み落としたものを勝手に転がされていくのって、居心地悪くない?
や。俺は逆に快感でしたよ。こういう捕らえ方もあるんだっていう。逆に、勉強っていう風な見方もしてたんで、うん。快感ではあったんですよ。あ、この人が見たら、こうなるし、こう転がっていくんだっていうところが面白かった。その頃は。ホントに。今は頑固になっっちゃたから、ダメかもしんないけど。
まあ、渡すまでは、僕と藤咲さん主導でやってはいたから。あんまりそういう感じはなかったですね。
合宿までに「BLOOD」としての企画書に仕上げんのに、一晩しかないつって、やってましたもんね。徹夜で。
うん。すごい苦しみましたけど。
夕日に飛ぶこうもりの絵に、「LAST VAMPIRE」って、ロゴをのっけようって、神山さんが写真を持ってきて。
(※↑ クリック!)
やりましたねぇ。
うん、そういう風に作った記憶があるんですよ。
それで、まあ、その合宿で、ある程度、「BLOOD――」の話の骨は出来たんですよね。ベースとなるラインというか、どういうシチュエーションがあってっていうのが、決まっていって。
俺はその合宿のあと、2週間で第1稿項を書き上げて。
で、その第1稿のシナリオを寺田克也さんに渡したんだたと思うな。字だけ。文字情報だけ、持っていって。
セーラー服と日本刀とっていうキーだけ、持っていって。10月8日には、もう出来てきたんだっけ。
出来てきた――それが、アイジーの「BLOOD――」サイトTOPに飾られた「小夜」。そして、以降、PRODUCTION I . G にぞくぞく届けられる、寺田克也氏が描いた多くのキャラクターの設定原画。
「保健医」はね、最初から、俺の中で、おばさんだった。
え? でも、俺のメモには、美人って描いてあるぞ。
美人ってかいてあった?
俺、美人にした。
そう?
俺の願望かな。(笑)
その辺が、俺自身のモノ作りの姿勢じゃないけど。キャッチーなものをすぐ、出しちゃうから。
まあね、たぶん、あれ、寺田さんのキャラでなかったら、あのおばはん――
キツイね。
キツイ。だから、あれが来た時に、俺はスゲェと思ったのよ。よくね、味のある人って、俳優さんにはいるけど、アニメでは、味のある人なんて、ふつー描けないんですよ。出てくる人は基本的に、美男美女っていうね。
うんうん。
それを寺田さんがね、アレを上げてきたときに、びっくりして、うわあ、さすが、ドンピシャだぁって。
あれとおカマのホステス。
あれはねぇ。
もう、アレで、もう、ホント、OK。
その辺がね、やっぱり、寺田さんの画力をもってして、始めて生まれ出るところなんでしょうね。
そうして、どんどん肉付けされ、蠢き出すキャラクターたち。輪郭があらわになり、実体化していくキャラクターたち、その一方、「小夜」だけは―――。
正直、誰も、小夜のことっていうのは、全然、わかってないんですよ。
作った本人たちも知らない。っていうか、知ろうとしないっすよ。知っちゃったら、もう、作れないってわかってるから。そこはもう、絶対に触れない、タブーとしとこうっていう。実際、考えたところで、彼女自身が何を考えてて、なぜ、吸血鬼を斬って、っていうところは、思い足らない。そういうもんだって考えるしかないんですよ。
コレ、ここで、しゃべっちゃっていいのか、わかんないんですけど。
これ以上はもうネタばらしだ。(笑)
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