6時限
もう誰にも止められない

「押井塾」が展開してきた企画を通すための企画書の練りこみ。
その成果が、この合宿を機に、
作品「BLOOD THE LAST VAMPIRE」の練りこみへと変貌していく―――。

藤咲 基本的には、あの場にいたら、押井さんと北久保さんに圧倒されるっすよ。負けちゃう。
神山 喋りで、その隙間に入るのが、難しいですよね。仮にテープ回してたら――
藤咲 ふたりの声しかしてないな。
神山 ふたりで 9 割話してて、残りの 1 割を俺や藤咲さんが、すこーし、時折、割って入るっていうところで。・・・割って入れないほどなんですよね。
藤咲 だから、逆にまだ、そこが足りないんだろうなってあるんですよね。俺とかもそうなんだけど。
神山 そうだね。
藤咲 自分にまだ、自分が出した企画書に対しての、思いっていうか、自信っていうか、欠けてる部分があるから。

神山 あと、知識の情報量だと思いますよね。
藤咲 情報量に関しては、ぜんぜん足んないっすね。やっぱり。
神山 喋り負けてしまう。
でも、自分たちが生み落としたものを勝手に転がされていくのって、居心地悪くない?
藤咲 や。俺は逆に快感でしたよ。こういう捕らえ方もあるんだっていう。逆に、勉強っていう風な見方もしてたんで、うん。快感ではあったんですよ。あ、この人が見たら、こうなるし、こう転がっていくんだっていうところが面白かった。その頃は。ホントに。今は頑固になっっちゃたから、ダメかもしんないけど。
神山 まあ、渡すまでは、僕と藤咲さん主導でやってはいたから。あんまりそういう感じはなかったですね。
藤咲 合宿までに「BLOOD」としての企画書に仕上げんのに、一晩しかないつって、やってましたもんね。徹夜で。
神山 うん。すごい苦しみましたけど。
藤咲 LAST VAMPIRE夕日に飛ぶこうもりの絵に、「LAST VAMPIRE」って、ロゴをのっけようって、神山さんが写真を持ってきて。

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神山 やりましたねぇ。
藤咲 うん、そういう風に作った記憶があるんですよ。
それで、まあ、その合宿で、ある程度、「BLOOD――」の話の骨は出来たんですよね。ベースとなるラインというか、どういうシチュエーションがあってっていうのが、決まっていって。
神山 俺はその合宿のあと、2週間で第1稿項を書き上げて。
で、その第1稿のシナリオを寺田克也さんに渡したんだたと思うな。字だけ。文字情報だけ、持っていって。
藤咲 セーラー服と日本刀とっていうキーだけ、持っていって。10月8日には、もう出来てきたんだっけ。
出来てきた――それが、アイジーの「BLOOD――」サイトTOPに飾られた「小夜」。そして、以降、PRODUCTION I . G にぞくぞく届けられる、寺田克也氏が描いた多くのキャラクターの設定原画。
神山 「保健医」はね、最初から、俺の中で、おばさんだった。
藤咲 え? でも、俺のメモには、美人って描いてあるぞ。
神山 美人ってかいてあった?
藤咲 俺、美人にした。
神山 そう?
藤咲 俺の願望かな。(笑)
その辺が、俺自身のモノ作りの姿勢じゃないけど。キャッチーなものをすぐ、出しちゃうから。
神山 まあね、たぶん、あれ、寺田さんのキャラでなかったら、あのおばはん――
藤咲 キツイね。
神山 キツイ。だから、あれが来た時に、俺はスゲェと思ったのよ。よくね、味のある人って、俳優さんにはいるけど、アニメでは、味のある人なんて、ふつー描けないんですよ。出てくる人は基本的に、美男美女っていうね。
藤咲 うんうん。
神山 それを寺田さんがね、アレを上げてきたときに、びっくりして、うわあ、さすが、ドンピシャだぁって。
藤咲 あれとおカマのホステス。
神山 あれはねぇ。
藤咲 もう、アレで、もう、ホント、OK。
神山 その辺がね、やっぱり、寺田さんの画力をもってして、始めて生まれ出るところなんでしょうね。
そうして、どんどん肉付けされ、蠢き出すキャラクターたち。輪郭があらわになり、実体化していくキャラクターたち、その一方、「小夜」だけは―――。
神山 正直、誰も、小夜のことっていうのは、全然、わかってないんですよ。
藤咲 作った本人たちも知らない。っていうか、知ろうとしないっすよ。知っちゃったら、もう、作れないってわかってるから。そこはもう、絶対に触れない、タブーとしとこうっていう。実際、考えたところで、彼女自身が何を考えてて、なぜ、吸血鬼を斬って、っていうところは、思い足らない。そういうもんだって考えるしかないんですよ。
神山 コレ、ここで、しゃべっちゃっていいのか、わかんないんですけど。
藤咲 これ以上はもうネタばらしだ。(笑)


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