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ああ、そういうのは、ありますね。あーもー、いろいろあったんで、忘れちゃったんですけど、思ったよりうまくいったっていうのもあったし。そうですね、あの、うん、普通は止まっているはずの絵が動いたっていうので、喜んだのは、っと、あんまり気づいてもらえないかもしれないですけどね。あの、すごくちっちゃい、いきなりミニマムな話になりますけど。
小夜がですね、口に折れた刀をくわえて、金網に登るシーンがあるんですよ。その時に、小夜に飛び掛かられて、金網が、がしゃんっ!って揺れるんですよ。そのカット、私がアフターエフェクトやってるんですけど、今までだったら、金網ってのは、背景だから、動かないんですよ。動かないんだけど、私、あのアニメーターですから、デジタルだと、小夜の動きに合わせて金網が、びよんよんよんよんよんって、揺れる動きってのは、簡単につくれちゃいますから。普通だったら、背景は、ポスターカラーで紙に描くから、二枚も三枚も描くわけにはいかないんで、質感のあるものっていうのは、セルのキャラクターが飛びついても動かせないんですよ。逆に、木がいっぱいあってですね、折れる木っていうのは、映像を見てると、すぐわかるんですよ。あの木折れる、あの壁崩れるとか、よくわかるんですよ。たとえば、戦車とかが、壁をぶっ壊して、どかんて現れる時に、その段階で壁がすぐセルになるから、あ、あれ壊れるってすぐわかるんですよね。だけど、とびかかるカットっていうのは、アフターエフェクトのバージョン4.0から、基本機能でできる技で、たんにオブジェクトを変形させるだけですから。その変形を時間軸で扱えるんで、うまく動かすと、ちゃんと、動きになってくれるんですよね。うん。だから、最初、ラッシュの段階では、小夜がたたたたたっ走ってきて、とてっ、ぐっ、金網をつかんで、のしのしって上らせてたんですけど、最終的には、たたたたた、で、小夜が飛び掛った瞬間に、がしゃんっ、で、つかんで上へ上へ行くたびに、ぐぁんぐぁん、揺さぶられるかんじになって、動かしたんですよ。
あと、同じ変形ツールだとですね、ディヴィッドが、車両整備庫の外で、ドアを叩いてて、そのときに、叩いたドアが、変形してへこむんですよ。そのときは一番最初にやったのが、何も動かないやつで、なんか、とてんって感じだったんですよ。あんな大男が、もう力のかぎり、どすんてやった感じには見えなくて、で、最初、だったら、鉄の扉だけど、ちょっと嘘ついて、ぐにゃって、変形させてみようかなって、やってみたら、ベニア板みたいになっちゃったんですよ。よよよんって。ああ、駄目だなっと思って、もっと考えてですね。その次に画面動を入れたんです。画面が動く。叩いた時に、ドスンって動くんですよ。そうすると、ずいぶん重くなってですね、なんか、ディヴィッドらしいドアの叩き方になったなって。で、そのときには、北久保さんも喜んでくれて。たいしたことないんですけどね、技術的には。
ただ、私がある程度誇りに感じてるのは、その画面動の動かし方とか、金網の動かし方っていうのは、アニメーターのタイミングセンスそのものが生きてますんで。ただ揺らしゃいいってもんじゃなくて。ドアを叩いたときに、少しあってから、でっかく揺れて、ちっちゃく揺れて、こっちに動いて、少しだけ動いて、ダッダ、ダダダッ、って動くか、それとも、ダダダッですぐ収まるのかとか、その、動く方向、動く幅が、コマ単位で頭の中に、浮かぶんですよ。
私、今、32才ですけど、えっと、動画から勘定すると、16才のころから、高校行きながら、動画やってましたんで。だから、人生の半分、そうですね、16年やってますからね。だから動きとか言うのは、頭にはもう浮かぶんですよ。
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(若干32歳で、キャリア16年! そういえば、北久保監督も若干36歳にして、キャリア20年超! そんなふたり、いったいいつどんなタイミングで出会ったのか?)
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私の知り合いが、「ジョジョの奇妙な冒険」の1、2巻目で、メカ作監というか、エフェクト作監みたいなことをやってて、シリーズなんで人が足りないってことで、その人が北久保さんに私を紹介してくれたんですね。で、その時に、初めて会って。「ジョジョの奇妙な冒険」第6巻のエフェクト作監を私がやったんですね。でも、その時は、あんまりいい仕事出来てないかな、まあ、北久保さんと最初で最後かなと思ってたんですけど、実は北久保さん結構気に入ってくれてたみたいでですね。
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(北久保弘之が監督した「 PS版GAME・攻殻機動隊 」のムービーパートで作画監督を担当した川元利浩氏も、当時のインタビューで、北久保監督との最初の仕事の時、もうそれが最後になるだろうと思ったと語っていた。ふーっ。ったく、北久保弘之という監督は、現場じゃ、よっぽど、嫌われてるんだろう)
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ふだん、人間的には、楽しい人ですね。
でも、北久保さんとも確認し合ってるんですけど、相手が手を抜くのは許さない。ただ単にナアナアでやってるつもりは全然ないんですよ。わきアイアイとはやるけども、まあ、互いに、ナイフ突きつけあってる部分ってのは、必ず、存在するんで。だから、自分が手を抜こうとか、安泰な位置に行こうとしたら、途端に・・・。たとえば、私が手を抜いたら、北久保さん、他の人を選ぶだろうし、北久保さんが、野心的な、攻撃的な態度をうしなってしまったら、私は離れていってしまうだろし。だから、そういう、慣れ親しんだっていうのとは別の部分で、つながってる部分があるんで。だから、うん、結束の部分は固いですよね。そんな風にして、仕事できる人なんか、そうそういないですから。
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(ナイフ・・・。「BLOOD」でも、あわや血みどろのバトルが・・!?)
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北久保さんと、しばらく、口きかなかったことはあります。えーとね、北久保さんがやろうとしていたことと、私がやろうとしていたことが、少し・・・。・・・北久保さん、そこまで考えてないくせに、なんで、そこまで強要するんだ、みたいな感じで・・・、俺がやってることっていうのは、空回りしてるんじゃないかっていう、うん、そんなようなことを、考えた時期があってですね。
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(おわっ、江面久、このインタビューの最中、初めて、自分を「俺」呼ばわりする。よっぽど、キテタんだろう)
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うん、あの・・・。私は手前のキャラクター、奥のキャラクター、その手前のキャラクターといて、それが、画面から、頭切れてる時に、その暗さっていうものすらにも、動機をあたえたいわけですよ。うん、だって、あるものを撮るわけじゃなくて、ゼロから作れるものなんだから。すべてを、ストーリー、ドラマツルギーとかの、武器にしたいわけですけど・・・。北久保さん、そこまで、腹くくってるのかどうかっていうのを、疑問に思った時期があってですね・・・。その時に、私はそこがひっかかって、一生懸命悩んで、「あがらねぇ」・・・「描けねぇ」・・・「違う違う」・・・とか言って、やり直してて、どんどん不愉快になっていって、言葉を交わす気になれない時期がね、10日くらいあったんですよ。
結局、自分の中では折り合いがついてですね。まあ、なんか、自分で盛り上がって、自分で解決して、迷惑な野郎だなって、自分であとで思いましたけどね」
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(北久保監督、実は、気づいてなかったりして・・・)
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わかってたと思いますよ。そういった意味じゃ、えっとね、なんか、古風な言葉ですけど、以心伝心って感じですからね。そのやってる姿と、その表情を見て、あと、あがってくる絵を見て、どういうところでこういう暗い表情をしてるかっていうのが、言葉でなくても、伝わってたと思いますよ。でも、そこらへんは、いつかわかる時がこないと、いくら言葉かけても、しょうがないなっていうのが・・・。北久保さんは待つ男なんで。私はね、待てない男なんですよ。うん。私の欠点として、急ぐ男。で、北久保さんはね、急がない、ゆっくりとした、待つ男なんで。
で、私は、北久保さんの、やりたいって言った一言に対して、いくつものプラン、いくつもの、犯行計画をつくるわけですよ。監督が目指しているものに、私が共犯者となって・・・。そのことを表現したいなら、こういうものはどうですか、こういうものならどうですか。で、翌日、こんなことも考え付きました。こんなことはどうでしょう、みたいな感じで、いろいろと、一番殺傷能力のあると思われるプランを私が練るわけです。北久保さんが主犯で、主犯が考えてる抽象的なこと、それを具体化するにはどれが一番効率的で、殺傷能力があって、まわりに対してアピールできるか、攻撃力があるかっていうのを、一生懸命、プランするわけですよ。
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というか、江面さんは藤子・F・不二雄だと思ってください・・・
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(げげげっ。いつのまに復活したっ!? 監督・北久保弘之、くぉの、クワセモノめ)
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