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江面さんは、ようするに、俺が求めている能力の、俺には持てなかった力を全部持ってるんですよ。だからその部分は、江面さんに一任したいっていう思いがあるんですよね。あと、本来だったら、そこに、もうちょっと立体的な・・・、立体的っていうのは、映像だけじゃなくて、音響っていう、3次元的な要素も加わってくるんです。
ミニマムな単位ではそれも出来るんですよ。実際、ブラッドのパイロット版で、江面さんに音楽を作ってもらったし。
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一時、音楽を目指してた頃があったんで、家に、それなりのでっかいシステムがあるんですよ。えっと、シンセ数えたらですね、30台ぐらいあって。私の20代の稼ぎって、だいたい音楽に流れてますから。
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江面さんは、パイロット版の時、キャラクターを、音と色と陰影で語ってくれた。
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なんで、それが作れたかっていうと、監督に聞いたからなんですよ。
小夜ってどんなこと言ってますか? 小夜と北久保さんが話し合うことはないかもしれないけど、何を話してるのを耳にしました?たとえば、こんな状況があった時、彼女はどんな風に振舞うと思います? って、どんどんどんどん聞いていったんですよ。
まあ、つらいですわね。あの、適当に監督やって、お金稼ごうと思ってうる人なんかだと、そんなとこまで考えてないよって。だから、私と仕事する人、真剣に仕事する人っていうのは、それなりの覚悟じゃないとできないと思いますよ。それを答えられない人だったら、共犯者になれないから。アドバイス程度で、かなり遠くで、こんな武器ありますけど、使ってみます? って。取り調べあったときは、ただたんに何もしらないで売っただけですって。共犯者になる以上は、相手の覚悟もきめてもらう。
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小夜の全てを、具体的な言葉にするっていう事は、俺は極力避けてるんですよ。ただ、具体的に話さないと、どう描けばいいのかっていう事が、スタッフに伝わらないわけですよね。そういう時、例えばこんな雰囲気だと理解してください、っていう様に、例え話で説明する部分っていうのがあって、それはどういうものかというと、いわば昔の吉原とかの世界で生きている、そういう女郎達の・・・、身を売って生きていかなきゃならない人間の、つらさや切なさの様な陰の面と、それと背中合わせに華やかさがあるっていう・・・。苦しい人生を生きていかなきゃいけないっていう、命が背負ってしまっている業と、しかしそれとは表裏一体に、美しさや切なさや儚さが存在している。そういった複雑なものが、小夜のキャラクターの内面にあるんだと。それで、なんていうか、彼女はただ怒っているだけではないと。うん。ただ嫌がってるわけでもないと。何かしら、バイタリティやエネルギーはあるんだけれども、ある一定のアンダーな感情の中に彼女は存在しているんです。でも、そのアンダーっていうのは、怒っているとか哀しんでいるとか、単一の理解し易いものではないので、単純には表現できないんです。それは、なんか非常に複雑な感情の倍音になってしまうんです。で、江面さんはその、小夜の主題っていうのを理解して表現しようとしてくれるんです。
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そのために、一番始めの頃に、焼肉屋で、北久保さんに事情聴取を行ったんですよね。たとえば、このようなシチュエーションをぶつけたときに、小夜ってどんな感じになると思います? 今まで見てきた中で、どんな感じしますって。
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ええとですねぇ、自分は「見てくる」んですよ。ある場面であったり状況であったり、その時小夜がどんな表情してたかを、俺は「 BLOOD の世界」に「行って見てくる」んです。それで、自分にはどういう風に見えていたかっていう事を、江面さんに説明するんです。勿論、見てきたって言っても、写真に撮って来る事は出来ないし、はっきり明るいところで、両目をきっちり開けて細部まで見てきたわけではないんですよ。なんとなく、薄目を開けて、こういう感じに見えたよっていう、アバウトな状態までしか見えていないんです。
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ところが、薄目だろうがなんだろうが、小夜の近くに寄れるのは、北久保さんだけなんですよ。北久保さんは、その場にいて、小夜を一番近くで見ている人間で。でも、やっぱり、小夜の心の底はわからないんですよ。
作ったストーリ-の中にいながら、ひとりの個人として、私ら扱ってるわけで。パーソナルなんですよね。
ただ、そういうことがあったらしいとか、あの時の表情はこういう表情をしてたっていうのを、逐一私に見てきたように、報告してくれるんで、小夜のプロファイルを私が作っていくんですよ。
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江面さんは、俺が見てきた現場のアリバイをきちんと正して、「じゃ、あなたが見てきた事っていうのは、こういうものなんですね」っていうふうに、確立してくれるんです。
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じゃ、小夜って、こうなんでしょうかね、って。だったら、昔、こんなこともあって、今、ちょっと、こんな風になっちゃってるんですね、ココロ的には。みたいな感じで。そうやって、どんどん私がプロファイルを作って、だったら小夜は、こういうシーンで、こういう背景を背負うはずだっていう、未来を予測できるわけですね。うん。
登場人物と、同じところにいて、どんな距離だったにしろ、見て来れるのが、演出とか監督なんですよね。たまに一緒に連れてってもらうこともありますけど。見に行かしてくれることもありますけど、まあ、だいたい北久保さんが言ってることのプロファイルをつくっていくっていう。
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でも、俺はあくまでも「見て来ただけ」という状態にとどめておきたいんですよね。「北久保」というパーソナリティーがイコール小夜ですっていう風には、絶対にならないようにしたいと。それは何故かというと、俺にキャラクターの全てが解っちゃったら、謎がなくなるんですよ。全部見えたあとには、単なるデータしか残らない。それってつまらないじゃないですか。
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北久保さんはそこらへんは正直なんで、そこまでわかんないっていうことは、わかんないって言うんですよ、あの、どうだろうなって、言う。で、見えづらいところでも、一生懸命、目を細くして、良く見えるようにするんですよね。それを私に話してくれるんですよ。少なくとも、見てもいないのに、見てきたふりをして話すって事はしないですね。
私、うそ言われると困るんで、その人を知らないのに、いろんなつぎはぎで、私にうそを言われると、プロファイルが完成しなくて、キャラクターが作れないんです。でも、北久保さんの場合は、見てるものを話してくれるんで、私が、どんどんどんどん、プロファイルを完成させていくわけですよね。
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作品を作っていく日々というものは、何から何まで不確定要素で、水もの的不安定な拮抗の中に、実に危うい、ギリギリのバランスで何とか成立している状態なんです。
作品に対して過度にのめり込む事なく、普通に仕事して、スケジュール通りに作業が進んで、大方の予想通りに、こういう作品に仕上がるよねっていう、机上の計算で目処が立てられる作業だけに甘んじて、この位のギャラが貰えれば文句無いです、っていう仕事の仕方で満足が得られるんだったら、「俺が小夜です」って言っちゃえばいいんです。でもそれをやっちゃったら、作品作りなんてつまんないんですよ。だから俺は、あくまでも、その、覗いてくるだけにしてるんです。で、俺が覗いてきたものを、どういう風に解釈するかっていうのは、今度は江面さんが江面さんの視点で捕らえるべきなんですよ。で、その見え隠れする小夜っていうキャラクターを「アイドルとして描けばいいんですね」って、江面さんの作家性で、モチーフの捕らえ方を決めるわけです。
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そうですね、聖書なんかで言うと、私が福音書家なんですよね。北久保さんは、預言者とか、ヨハネだったり、実際にそれを聴いてる人ですね。で、私が、福音書家となって、それを書き連ねて、周りがわかりやすいように、マタイ伝とか、ヨハネ伝とか、そんな感じに、書いていくんですよ。
まあ、あの、宗教的な話、そういう聖書の話になると、怪しくなってくるんであれなんですけども・・・(笑)
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あぶない宗教やってんじゃないかって、そういう風に思われても困るし(笑)
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(一番、あぶないのは、ひげひげー&かみのびっぱなしー、の監督の容姿だろ!)
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今、ちょっと外見がグルっぽくなっちゃってて・・・早く尊師から脱出しないと(笑)
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数ヶ月前は、なんか、こざっぱリしてたのに・・・。いっきになんか、また、干からびてしまって(笑)
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(ミイラ化・・・? いかんっ。ヤバい。いや、この方たちはちっともヤバくないです。変なシューキョーに手つけてません。大丈夫です。ただ、監督が病弱なだけで・・・。「BLOOD」制作中にも、2度も階段から転げ落ちたりして、さぞや、スタッフは、はらはらどきどき・・・)
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周囲の反応はめちゃめちゃ冷静ですね。っていうか、しょっちゅう身体壊してるんで、スタッフはみんな、もう慣れっこになって、あ、またかっていう感じで。
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スタッフの一人は、北久保さん体壊すの趣味なんですか、って言ってますからね。趣味だからなーって。まあ、そうと言えなくもない。実際でも、体資本だから、どうしようもないんですよね。うん。体酷使することが多いですからね。
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だから、俺がやらなきゃいけない仕事、例えば俺が「見てこなきゃいけない」期間は、なるべく壊れないよう心掛けてます。俺の証言を待っているスタッフに伝えなければならない事を伝えたら、あとはヨロシクって、駅伝みたいにタスキを渡して、そのあと倒れるようにしようって。
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(タイミング計っとんのかいっ)
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いや、本人に自覚は無いんですけど、狙いすましたように、体調がおかしくなりましたね。うん。あの、映像の作業の終わりがもう見えたなって頃から、ガガガガガガッっておかしくなりましたね。
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すごかったですよね、あの落ち具合。
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どっどっどっど-んって。
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ドカーンて、落ちましたからね。
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